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いちまいもん

 

「剥いだもんは、いつか切れるからな。いちまいもんがええ」

(剥いだものとは、天板など、板を作るときに木組みや接着剤で接いだものことを言い、切れるとは、それが剥がれるということ。
いちまいもんとは、その反対の継ぎのない一枚の木の板のこと。)

師が何気なくおっしゃった一言は、今も私の中で深く刻まれている。

近年の接着剤の性能は素晴らしく、10年20年は全く問題ない。
ヴィンテージの家具などの昔の家具ですら70年前の当時の接着が今も生きていることを見かけることがよくある。
接着剤は、昔からかなり優秀なのだ。

なのに接着したものは、いつかきれるから可能な限り使いたくないという師の時間の感覚は、
100年200年のことをさしていて、それが木工の、指物の時間の流れなんだ。
そう理解してから、私はデザインするときに可能なものはできる限り、木が一枚でとれる大きさで寸法を決める。
そうすることで表情が豊かで美しいものができる。またその先、木がどう変化していくのか知りたい。
いつの日か、その表情がどうなるのかを見るのが楽しみになっている。
反面、一枚で作ると木が動いて、割れたり、反ったり、ねじれたりと道具として捉えると不都合なことが多い。

いろいろと思案を重ねて、結局いつも
人が勝手に木を道具にしたんだから、木がそう動きたいなら動いてもらって、また直せばいいじゃないか。
直せることを前提に考えるのが指物師なんだから。
そういう考えにたどり着く。

私は、これからもできるかぎり「いちまいもん」で作りたい。

明日、広島で師の展示会があるらしい。
ご挨拶にいかなきゃ。
また聞いたことのないお話を聞ける気がしてならない。

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