革の木取
工房を始めてほとんど革を使うことはなかった。
余った革の端切れを使いこなす方法がなかったから。
ある店舗のお仕事ではるばるデンマークからやってきた8頭分の革たち。
日本では半頭分が主流、余分なところが切り落とされたきれいな状態をよく見ていたのだけど、海外では革の仕入れは一頭分ずつということが新鮮だった。
広げてみるとその大きさ、シワや傷、生きてきた証の迫力に圧倒された。
樹木から木材となるのと同じように、革も命あるものから素材として頂いていることを強く感じた。
作業のときも一頭分の革を広げてどこを背に座面につかうのか。
革の伸びる方、シワの向き、いろいろな条件から当てはまる場所を探す。
まるで木取りをしているような感覚になる。
(木取りとは製材された材料からどの場所をどの部品にするのか決める作業)
一頭から椅子の部材を切り出すと面積としては、半分くらい余る。
木の端材をなんとか使い切りたいと思うのと同じように、この余りの革も無駄なくきれいに使い切りたい。
その思いが強くなり、友人にこの革で作品を作って欲しいと声をかけた。
その友人は、お財布の研究者のよう。
自分のものづくりを常に前へ前へと追い続けるものづくりをしている。
「僕は、過去に私のモノを購入してくれた方にまた会いたい。
お会いして、その後の財布のこと、革のことを一緒に共有したいし楽しみたい。
だからできる限り出向きます。」
その友人の言葉に彼のものづくりのすべてが詰まっている。
私もそうありたいし、そうあるべきだと心から思う。