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八分仕込み

 

私たちが日々使う、鉋(かんな)や鑿(のみ)手工具は八分仕込みという状態で道具屋さんで売っている。
(八分仕込み(はちぶしこみ)とは、刃物はまだ研ぎ上がっていなかったり、あと少し手を加えなければ使えないという状態のこと)

手の大きさも違えば、どういう作業で使うのかわからないので、使い手が自分の好きなように最後の手入れをして好きな具合で使ってください。
という職人へ配慮からできている。

現代は家電でも文房具でも買ったらすぐ使える状態が当たり前だったので木工具の八分仕込みという考え方がとても新鮮だった。
ユニバーサルデザインという言葉もあるくらいに「どなたにでも使いやすいデザイン」という言葉を近年よく聞くが、
木工具ではまだ使い手が自分で使いやすく準備するという考え方が残っている。

もっと古い時代は、「木をあつかう職人の沽券にかかる」ということで、刃物だけを鍛冶屋さんに頼み木の部分は自分で作るのが流儀だった。
(ある職人さんは、鉋に使う「樫の木」の山をもっていたというくらい。)

私の手工具もそんな話を見聞きする中で、もれなく自分で仕込みをし、木の部分も何台か作って使っている。
道具も作ってみることでどうすれば、気持ちよく使えるのかがわかり、より手工具が好きになった。

そんな楽しみにを覚えるとそれが当たり前になり、
工房で使う木工機械もスイッチを使いやすい位置に変えたり、
車のシフトノブを手触りを良くしたいから木にしたり、
どんなものでも買ったらなにか工夫することはないのか。と自然に探すようになった。

自分の使いやすいように工夫することの快感に目覚めると暮らしも色々とおもしろくなる。
今の世の中は、工夫して暮らすという機会が昔と比べるととても減ったのかなと昔の職人や先人の話を聞くたびに思う。

家具も使いながら、その人の暮らしに合わせて工夫した方がより快適に使えることがあるはずだから
いつも納品の際、なにかこうしたいと思うことがあったらご遠慮なく言ってくださいね。と伝えている。

先日もロロスツールを使ってみて脚を少しカットしてほしいとご連絡があった。
思いを伝えてくださりとても嬉しいし、
それに応えることで、その方にとって私の家具がより暮らしに密接してくれれば本当に嬉しい。

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